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突然人の壁がなくなり、支えを失ったエリンシアはコケそうになりながらロゼルを見つけ、嬉しそうに笑いながら言った。
そのまま彼女に歩み寄り、辺りを見渡す。
「たくさんの人に押し流されてしまって後ろの方にいたのですが……急に、なにがあったんですか?」
「ちょっとね。一悶着……」
ロゼルは小さく言って、再度ユーリの頬に目をやった。
やはり見間違いではない。明らかに腫れている。
「……ケンカ、ですか?」
「まあ、そんな感じかな?」
「…………」
エリンシアはロゼルの言葉にため息をついてから、突然ハッとして、手にしていた紙切れをまだ残っている野次馬達に見えるようにして、大声で叫んだ。
「すみません! この印を持つボラードの方はいらっしゃいますか!?」
「ちょ、エリー?」
突然のことにロゼルはギョッとして周りを見渡す。
だが、エリンシアが声を掛けた野次馬達の方が更に青い顔をしてギョッとしていた。
みな口々に姫さまだ、とか、エリンシアだとか言い、さーっと波が引いたかのようにどこかへ行ってしまった。
「あ、あれ? みんないなくなってしまいました」
「そりゃそうでしょ。急に大声出されたら誰だってビックリするわよ」
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