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「ああ、そうですよね。ごめんなさい」
ロゼルの言葉にエリンシアはしょんぼりと俯いた。
もう周りには野次馬らしい野次馬はどこにもおらず、それを見て更に肩を落とす。
と、
「ひえっ!?」
ユーリが無言のままエリンシアに近づき、彼女の手にある紙切れを勝手に取り上げてしまった。
彼はそのままそれを眺めている。
突然のことにエリンシアは驚いて、反射的にロゼルの後ろに隠れるようにして体を小さくしてしまった。
「……おい」
長いこと紙切れを見ていたユーリは、男の腕章を確認してから未だ座り込んでいる男に対して低い声を上げ、彼に近付いていく。
なぜか、まったく関係ないのにエリンシアが体をびくつかせた。
「この紙切れ、てめぇのだろ。呼ばれたんなら返事くらいしろ」
「ひ、あ……すいやせん……!!」
男は慌てて立ち上がり、足元をふらつかせながらユーリから紙切れを受け取った。
それを見ていたエリンシアはロゼルから離れて、男につかつかと歩み寄る。
「あなたの証明書だったんですね? この法外な値段はなんなのですか? 説明していただけますか?」
そんな毅然な態度を眺めていたロゼルは、隣にいるリグに小声で声を掛けた。
「……あいつが腰抜かしてることに疑問は抱かないのね」
「ああ、確かに」
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