第1章

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リグから即聞こえてきた返事にロゼルはふふ、っと笑った。 エリンシアから声を掛けられた男は顔を真っ青にして、華奢なエリンシアを見下ろして顔中に冷や汗を垂らしている。 「別に罰するようなことは致しません。正直に答えてください。現在のボラード料では、生活が苦しいのですか?」 「え、あ……いや……」 「もしそうであるのなら、ボラード料の値上げを検討します。ただ、己の利益のみを求めたのであるならば、それは過ちを犯していることに他なりません」 エリンシアの強い言葉に男は黙り込み、なにも答えないまま下を向いてしまった。 それを見てユーリはわざと大きなため息をついて彼に背を向けてた。 そのまま、彼はロゼルの船に向かって歩いていく。 「あ、おい。ユーリ。どこ行くんだよ」 「取り込み中に金は払えねぇだろ。出直す」 背後から聞こえてきたリグの声にユーリは歩みを止めることなくぶっきらぼうに答える。 リグは納得したように一人で頷き、彼に駆け寄ってそのまま一緒に船へ戻って行ってしまった。 「……わたしも、あれこれと厳しいことは言いたくありませんが、民の平等を保つためには仕方の無いことなのです。より良い国が作れるよう、わたしも努力するので、どうか、協力してください」
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