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エリンシアがそう言うと、男は俯いたまま頷いた。
「申し訳ございませんでした……」
「いえ。分かってくださればわたしは十分です。これからも、港のボラードのこと、お願いしますね」
今度は優しいエリンシアの言葉に男は頷き、更にうな垂れた。
それを見て彼女は優しく微笑み、彼に背を向けてロゼルの隣へ行く。
「? あら? あの背の高い男性は?」
「あんたが話し合ってくれてるからって、一旦船に戻ったわよ」
「そうですか……」
エリンシアを見下ろして、それからロゼルは男に目を向けた。
先ほどまで力なくうな垂れていたその男は、既に顔を上げていて、恐ろしい目つきでエリンシアの背中を睨んでいた。
ロゼルはじっとそんな彼の様子を見つめ、男が彼女の視線に気付いた途端、慌てて背を向けて走り去ってしまった。
「……あんたも大変ね」
「へ?」
「気にしないで。……あぁ、そっか。お金、ユーリが持ってるんだった」
自分の身の回りを確認して落胆したロゼルは独り言のようにそう呟いて、高い位置にある太陽を見上げた。
それから、愛らしい表情をしているエリンシアに笑顔を向ける。
「ねぇ、エリー。せっかくだし、船に上がる?」
「え!? いいんですか!?」
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