1人が本棚に入れています
本棚に追加
とても嬉しそうに頬を紅潮させた彼女にロゼルは微笑んで、頷いた。
「ええ、もちろんよ。じゃあ、行きましょう?」
その言葉にエリンシアははいっ、と子供のように元気な返事をして、歩き出したロゼルの横を歩いた。
先ほどまでの野次馬に囲まれていた騒がしさはさすがにないが、それでも港は賑やかだ。
気の荒い男たちが大声で言葉を交わしている。
「やっぱり、すごい迫力ですね。港にいる男性たちは、体が大きくて少し怖いです……」
「ふふ、その割にはあの男にガツンって言いに行ってたわね」
「それは……公主としての役割ですから……」
言葉を聞いたエリンシアは、なぜか先ほどまでの気丈さを失い、か細い声でそう答えた。
ロゼルは特に気にする素振りを見せずに、笑顔のまま更に言葉を続けた。
「無理はしないでね」
「ええ、分かっています。ありがとうございます」
ロゼルを見上げたエリンシアの笑顔は、とても明るいものであった。
そんな他愛ない会話をしている内に、二人はロゼルの船が停まっているボラードに辿り着いた。
真っ赤な船体に金色の装飾が施された華奢なキャラック船。とても美しい。
「うわぁ! すごいですね!」
最初のコメントを投稿しよう!