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船を見上げたエリンシアはきらきらと目を輝かして胸の高鳴りを隠さないまま、上ずった声を上げた。ボラードを奥まで進み、船体の真横まで歩いていくと、エリンシアはスキップしそうな勢いで高い足音を立てた。
「そんな喜ぶとは思わなかったけど。乗っていいわよ?」
「で、では……」
ロゼルの言葉にエリンシアは、恐る恐るその足を船の甲板に下ろした。
「うわ、うわ! すごいです!」
「地面歩くのと何も変わらないでしょ? もう……」
なにをしても感動するエリンシアを横目に、ロゼルは甲板を見渡す。
水夫が何人か目に入り、その内の一人に彼女は歩み寄った。
「ロイド」
「あ、ロゼル。おかえり。……ねぇ、なにかあったの?」
声を掛けられたロイドはにこっと笑って言った後、小声で彼女に問う。
ロゼルは苦笑して一息ついてから、どこか寂しげな瞳をして答えた。
「またケンカしてたのよ。ユーリが強く言ってくれたから、収まったけど。ロイドはいつ戻ってきてたの?」
「ユーリ兄が先に帰ってろって言ったから、戻ってきたんだけど……。あ、ケンカの相手って、ボラードの男の人?」
「あたり」
やっぱり、とロイドは言って、ロゼルに向けていた視線をブリッジの下の階段に移した。
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