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「ユーリ、ごめんね。いつも嫌な思いさせちゃって……」
「俺がいいって言ったんだ。気にするな」
低く響く声で淡々とユーリは答え、顔を上げた。
その彼の顔には、相変わらず表情が無い。
「怪我、大丈夫?」
「ああ。……なぁ、そんなに腫れてるか?」
ロゼルの言葉にユーリは自分の頬に触れて彼女を見下ろす。
しかし、ユーリが触れているのは殴られていない方の頬で、ロゼルは思わず笑ってしまった。
「逆よ、ユーリ。そっちじゃないわ」
「? ああ、こっちだったか……」
「ふふ。その様子だと、本当に大丈夫そうね」
ロゼルは優しく微笑んで、ユーリを見上げてからエリンシアに目を向けた。
彼女はおどおどしながら目線をいろんなところに向けてただ突っ立っている。
「あんた、なにしてんのよ。もっとこっちに来たら?」
「へ! あ、あぁ……は、はい」
ロゼルに声を掛けられて、エリンシアはゆっくりと近付いてくる。ロゼルの体に半身を隠すようにして、ユーリの正面に立った。
「なに隠れてるのよ」
「え、いや……しょ、初対面の方を前にすると緊張してしまって……」
「何回か顔は見てるでしょ? それにあんた、さっきのボラード男には堂々としてたじゃない」
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