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痛いところを突かれてエリンシアはぐっと唇を噛み、ちらりとユーリを見上げた。
高い背、ガタイの良い身体、鋭い目……怖い顔。
元々男性があまり得意ではないというエリンシアだが、特にユーリには苦手意識を持っているらしい。
ユーリはそんな彼女を見ても表情一つ変えず、何の前触れも無く突然彼女に声を掛けた。
「……エリンシアさま、ですよね?」
「はい!?」
あまりにも急なことにエリンシアは飛び上がってロゼルの腕にしがみ付いた。
「ちょっと、なによ」
「ご、ごめんなさい!」
まるで小動物のような反応を繰り返すエリンシアにロゼルは笑いを堪えられず、笑顔になりながら肩を竦める。
「先ほどはありがとうございました。おかげで、適正価格でボラードを借りられます」
「は、あぁ……」
厳つい顔なのに紳士的な言葉を投げかけられ、エリンシアはポカンとしてからそっとロゼルから離れ、ユーリに向かって会釈した。
「わ、わたしは当然のことをしたまで、です。みなが平等に恩恵を与え、与えられる国造りを目指していますから」
その言葉にユーリは頷き、ロゼルに目で合図を送るとそのまま船を降りて行ってしまった。
ロゼルはしばらく彼の背を目で追っていたが、彼が見えなくなると一息ついてエリンシアに声を掛けた。
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