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十歳程度に見える彼は、誰から見ても愛らしい子供だ。そんな彼を、腰に手を当てながら見下ろして、ロゼルは呆れながら言う。
「もう……危ないわよ?」
「大丈夫だよ。あそこから見える海、きれいなんだよ! ロゼルも来る?」
「あたしは良いわ。落ちちゃいそうだし」
ロイドの言葉にそう返して、ロゼルは笑った。笑顔の彼女につられて、ロイドも笑う。
「今日も良い天気だね」
「そうね。良い天気の海ほど、好きなものはないわね。気持ち良い!」
もう一度腕を伸ばして、ロゼルは幸せそうに微笑む。潮風が彼女の髪を揺らして行く。
真っ青な海に金色の髪が靡いて、美しい。ロイドはそんな、海を見つめているロゼルの横顔を見惚れるように眺めていたが、不意に聞こえてきた重い足音にハッとして、慌てたように視線を逸らした。
船室に続く階段を上がってきたのは、大柄な青年だ。
年は二十代後半辺りだろうか。無造作に肩の上で切られた暗い茶髪に、鋭い眼光を放つ緑碧の瞳。
その大きな体には、無意識に威圧を感じてしまう上、整った彼の顔には表情が見当たらない。
彼は気怠そうにしながら二人のところまで歩いてきて、口を開いた。
「相変わらず、二人は早いな」
「ふふん、でしょ? まあ、目が覚めちゃっただけなんだけどね」
ロゼルは彼に言って、側にいるロイドも右手を上げながら元気に一言、
「おはよう、ユーリ兄!」
「ああ。おはよう」
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