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ユーリ、と言う名の彼は無表情のままそう言って、先程のロゼルのように両腕を伸ばし、深呼吸した。
そのせいか、彼の瞳が少し穏やかになって光を宿したように見えるのは、多分気のせいだ。
「二人でなにしてたんだ?」
「特になにもしてないわ。海見ながらおしゃべりしてたの。ね?」
コクリとロイドは頷いて、長身の二人を見上げる。
ユーリは特に大柄な体型なのだが、女であるロゼルもなかなかの長身な上、ヒールの高めの靴を履いているため、全く小さく見えない。
そんな二人を目の前にすると、自分が異常に小さいのでは、という錯覚に陥って、意味もなく落ち込む。
「今日は行くあてがあるのか?」
「うん。今日からクレンゼルに向かうわ。セゲンシュエル(伝達燕)が届いたの」
「クレンゼルか。了解」
ユーリは頷いて、一度辺りを見渡す。ちらほらと水夫たちが甲板に上がってきている。
全員、茶髪に緑色の目だ。
ユーリと目が合った者が数人、明るく朝の挨拶をしてくれる。
何人かから声を掛けられてから、彼はチラリと船室の方に目をやって低く言った。
「……リグを起こすか?」
「ふふ。ううん、大丈夫よ。急ぎの用じゃないし。リグが起きてきたら、クレンゼルに向かいましょう?」
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