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「分かった」
ロゼルの言葉にユーリは言って、重い足音を立てながらどこかへ行ってしまった。
また二人きりになったロイドは、ロゼルを見上げながら彼女に問う。
「クレンゼルって、ロゼルのお友達がいるところだっけ?」
「そうよ? 会うの、随分と久し振りになっちゃったから楽しみだわ。それに、あの国の雰囲気、好きなのよね」
ロゼルはそう答えて、舷縁に寄り掛かった。
目下には透き通る海、その上には優しい色の空。
何もかもが素晴らしい。
ロイドも背伸びをしながら、海を覗き込む。魚が泳いで行くのが見えた。
「ロゼルは海が大好きなんだね」
「うん、大好きよ。海より自由を感じられるものって、ないんじゃないかしら」
そう答えた彼女の笑顔は、とても優しかった。
◯
「キャプテン! クレンゼルって、確か西っすよね?」
「ええ。リグ、西はどっちだかわかる?」
「分かんないっす!」
舵を握った青年・リグの、良い笑顔の返事にロゼルは苦笑しながら階段を登る。
彼の横には、眉根を寄せて怖い顔をしたユーリが腕を組んで立っている。
「いい加減羅針盤の読み方を覚えろ」
「別に良いじゃねぇかよ。知らなくても困んねぇんだし」
「毎回ロゼルに聞いてんじゃねぇか」
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