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言われて一瞬言葉を詰まらせたリグだったが、すぐにヘラっとして顔をロゼルに向ける。
ロゼルはちらっとユーリを見上げてから、小さく笑って羅針盤を覗き込む。
それから、羅針盤が示す西の方角を指差して言った。
「西はこっちよ。リグ、舵取りお願いね」
「おう! 任せてください!」
リグが西に向かって勢い良く舵を切ると、船体はそれに従って針路を変える。船底が海面を叩く音がとても心地良い。
頬を撫でて去って行く潮風に心が浄化されていく。
「あ、リグ兄! やっと起きたんだね?」
「おう、ロイド! おはよー」
船室から出てきたロイドが、ブリッジを見上げながら言うと、リグは元気に返した。
それを聞いて、ロイドは一旦頭の真上にある太陽を仰ぐ。
それから、苦笑いして階段を登る。
「もう、おはようの時間じゃないよ」
「だよなぁ、悪ぃ。起こしてくれりゃ良かったのに」
ロイドの言葉にリグはユーリを横目に見ながら言う。
視線に気付いたユーリは、彼を睨むようにしながら言い返す。
「俺は叩き起こそうとしたんだがな」
「え、こわっ……」
二人の会話に、ロゼルは自然と笑顔になる。
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