第1章

6/36
前へ
/39ページ
次へ
言われて一瞬言葉を詰まらせたリグだったが、すぐにヘラっとして顔をロゼルに向ける。 ロゼルはちらっとユーリを見上げてから、小さく笑って羅針盤を覗き込む。 それから、羅針盤が示す西の方角を指差して言った。 「西はこっちよ。リグ、舵取りお願いね」 「おう! 任せてください!」 リグが西に向かって勢い良く舵を切ると、船体はそれに従って針路を変える。船底が海面を叩く音がとても心地良い。 頬を撫でて去って行く潮風に心が浄化されていく。 「あ、リグ兄! やっと起きたんだね?」 「おう、ロイド! おはよー」 船室から出てきたロイドが、ブリッジを見上げながら言うと、リグは元気に返した。 それを聞いて、ロイドは一旦頭の真上にある太陽を仰ぐ。 それから、苦笑いして階段を登る。 「もう、おはようの時間じゃないよ」 「だよなぁ、悪ぃ。起こしてくれりゃ良かったのに」 ロイドの言葉にリグはユーリを横目に見ながら言う。 視線に気付いたユーリは、彼を睨むようにしながら言い返す。 「俺は叩き起こそうとしたんだがな」 「え、こわっ……」 二人の会話に、ロゼルは自然と笑顔になる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加