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「今日職場でさ、お前が好きそうな映画の話聞いたんだ」 彼は私にそう言っては、二人でその情報のすべてを共有しようとしていた。 「ねぇ、行きつけの居酒屋の店長さん、面白い人なんだけど行かない?」 私は彼にそう言っては、彼の良さと周りの良さをみんなで共有しようとしていた。 どちらが良かったんだろう。そんな不毛なことは、終わりが来たときにすべてどうでもよくなったのだ。すべてが見えてしまったから。 あぁ、求めるものがちがうんだ。そんな根本的なこと。 それを機に、ここ数年ほとんど彼氏のいない時期のなかった私は、彼を作ることをやめることにした。誰かに固執して、誰かに頼らないと生きられないような自分が、弱くて惨めな、なんとも可哀想な女でしかないように思えてしまった。これは、早く自律したかった私とは真逆じゃないか、と。 フリルをあしらった、ふわふわの服こそ着たことはなかったが、ジーンズのパンツスタイルにシンプルなTシャツ。黒や赤のタイトスカートに白のサテンのシャツ。ミニスカート、ロングスカート。花柄ワンピ、皮のライダ―スジャケット。お色気系も清楚系も格好良い系もお姉さん系も。彼らが好きそうなものを、その時々の私は好んできたけれど。 本当に好きな私の服装は、どこにあるんだろう。 色とりどりに、ジャンルもまばらな服たちを厳選する。 これは、つまらない。 これは、あれと一緒。 これは、ときめかない。 これは、何年も前からあるけれど好き。 これは使い勝手がいいから、いる。 好き、嫌い。 いる、いらない。 合う、合わない。 「あはは」 思わず、笑いが込み上げてきた。まるで。 「男みたい」 別れた男たちを思い出していた。その時その時で、熱を上げていたはずだった。流されていた時もあった。みんなみんな、私を作った。なのに。 「これも、今は、いらない」 整理していたはずなのに、どこかでたがが外れていく。狂ったみたいに、楽しくなってきた。 これも、いらない。 あれも、まぁ、いらない。 こっちは残して、これはいらない。 いらない、いらない、いらない。 選別しているうちに、服はどんどんと数を減らしていった。
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