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ネコおばさまは、僕の隣に住んでいた。
大きなお屋敷にたった一人、いつも白い帽子を被って庭のお花の手入れをしていた姿を今でも覚えている。
長い髪をきれいにひとつに纏めて、細かい細工の髪飾りで彩っていた。
当時、僕はまだ小学生。
共働きの両親の帰りはいつも遅くて、その頃のおばさまはまだ正気を保っていたから、よく遊びに行った。
おばさまは生涯独身で、子供もいなかったらしく僕には特別やさしくしてくれた。
「あらあら、もう学校はおしまい?」
「うん、今日は午前中までだから」
「そう。良いわねぇ。羨ましいわ」
「おばさまは一日中ずっと家にいるのに、どうして羨ましいの?」
「え? そうねぇ……どうしてかしら」
「分からないの?」
「私は、家にいるのが仕事みたいなものだからねぇ……」
「ヘンなの」
後から聞いた話だけれど、ネコおばさまはいわゆる愛人というヤツだったらしい。
有名な会社の社長が相手だとか、海外のお金持ちが相手だとか……詳しい話は、まだ子供だった僕の耳には入ってこなかった。
「にゃあ」
僕の足下に、ネコおばさまの名前の由来にもなったネコのシャンティがまとわりつく。
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