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最初の崩壊は、お花だった。
いつも、季節に合わせた花々が慎ましく咲いていたのに、時期が過ぎて枯れたままのお花が目立つようになった。
でも、この頃はまだネコおばさまと会話ができた。
僕はどちらかというと物静かな方で、同年代の友達があんまりいなかったから、中学生になっても時々おばさまの所に行っていた。
「こんばんは、ネコおばさま」
「あらあら、いらっしゃい。また来てくれたのね」
「うん。シャンティの様子が気になって……」
「そう、ありがとう。最近寝てばかりのことが多いけど……きっとすぐに良くなるわ」
飼い猫のシャンティは、おばさまの数倍のスピードで年々老いていた。
すっかり色艶を無くした毛並みは、丁寧にブラッシングしてもかつてのようなしなやかな輝きは取り戻せないだろう。
「おばさま。お庭のお花、枯れてたよ」
「あら、そう」
「枯れたお花をそのままにするなんて、珍しいね」
「そうね……今はシャンティのお世話が忙しいから……」
おばさまはそう言って、ふかふかのクッションに沈む愛猫に目を向ける。
僕はそんなおばさまを盗み見る。
ずっと家にいるはずなのに、おばさまはいつも完璧な化粧を施していた。
服装も、僕の目から見ても高価だとわかるもの。そして装飾品。
今日も変わらない。
ネコおばさまは、うつくしい。
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