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「シャンティ、はやく元気になるといいね」
「ありがとう。アナタはやさしいわ」
無責任な言葉も、おばさまはそのまま受け取ってしまう。
僕は内心、シャンティはもうすぐ死ぬだろうと思っているのにおばさまはそんなことに気がつかない。
僕が心から、シャンティが元気になればいいと思っているだろうし、おばさま自身も飼い猫がもう少し待てば元気な姿を取り戻すと信じていた。
僕にとってのおばさまは、単なる隣人に留まらない。
一人っ子だし、共働き家庭だし、友達も少ない僕にとって、ちゃんと話を聞いてくれる存在というのはそれだけで神様みたいに尊い存在だった。
おばさまは、僕が近くにいてもイヤな顔をしない。
おばさまは、僕が話す内容について「忙しいから」と流れを切ったりしない。
へえ、そうなの。それで、どうなったの?と続きを促してくれる。
拙い知識にも感心してくれるし、時にはクスクスと笑ってくれる。
だから、おばさまの顔の皺が日に日に深くなることなんて、僕は気にならなかった。
……僕はね。
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