きのうの話

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きのうの話

 ネコおばさまとの時間が無くなっても、僕の生活は続く。  もう大学生になった。  友達は相変わらず出来なかったけれど、それでも日々は過ごせる。  さみしいときは、かつての思い出を取り出してなんとか食いつないでいた。 「ねえ、アンタ。聞いた?」 「なに? 母さん」  夕食の時間、珍しく早く帰宅していた母がスーツ姿のまま言った。   「最近この辺り、変質者が出てるらしいわね」 「変質者?」 「そう。人間を襲うワケじゃないみたいなんだけどね。ホラ、この辺りって昔はもっと野良猫が多かったじゃない?」 「うん」 「最近、かなり減っているらしいわ」 「それって、いいことなんじゃないの?」 「それがねぇ……お隣にネコおばさまいたじゃない?」  ネコおばさま。  久しぶりにその言葉を聞いて、胸が跳ねた。
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