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その日、愁也はバーの仕事を終え、帰り道をだらだらと歩いていた。
「あ~疲れた~。ビール飲んで寝よ・・・・・・」
愁也が公園を通り抜けようとすると、うめき声の様なものが聞こえてきた。
「なんだ? カップルがイチャついてんのかな?」
愁也が通り過ぎようとすると、「やめろよっ! 離せっ!」と、声がハッキリと聞こえて来た。
「・・・・・・なんだケンカか?」
声のした方を見ると、美しい少女が男とモメていた。
「話はついてんだよ、さっさと来い」
少女より十歳は上であろう男が、少女の手を掴み、無理やり連れて行こうとしていた。
「ヤダっ! もうヤダって言ってんだよっ」
少女が必死に抵抗する。
「ちょっと・・・・・・嫌がってるだろ、やめろよ」
愁也が見かねて助けに入る。
「なんだお前、関係ね~だろ」
「いや、だってこの子嫌がってるじゃん。女の子に乱暴はまずいでしょ」
愁也が穏やかな調子で言った。
「うるせぇなっ、引っ込んでろ! ほら、来いって」
男が少女を力づくで連れて行こうとする。
「よせって言ってんだろ!」
愁也が男の顎に一発くらわせ、少女の手を引き走り出す。
「バカ、走れって!」
「え、ちょっとっ・・・・・・」
戸惑う少女を連れて、公園を全速力で走り抜ける。男の怒声がどんどん遠ざかっていく。
「ちょ、ちょっと待てよ・・・・・・」
息を切らせ少女が立ち止まる。
「ああ、ごめん。大丈夫?」
愁也が少女の方を覗き込む。
「・・・・・・なんで助けたんだよ?」
少女がキッと睨む。
「なんでって・・・・・・あのままだったら連れてかれてただろ?」
「あんたに関係ねぇだろ」
「君、女の子なのに口悪いね・・・・・・」
「は? 女じゃねぇし」
少女が冷たい目で睨みつける。
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