王子くんの12か月 夏至、そして小暑

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夕方、俺は書店へと向かう。 この時間帯から書店はお客が増えるようだ。 今は学校帰りの学生が多いようだ。 入口付近には新刊や売れ筋の書籍が並ぶ。 左側は雑誌類が並び、右側には単行本、文庫本と並んでいる。 奥に行くとマンガ類も置かれていた。 この書店には2階もあって、そこには専門書や写真集なんかも置いている。 俺が入店した時にはカウンターに澤山さんの姿はなかった。 『澤山さんに本を選ぶ』 そのことを頭に置いて、ずらりと並んでいる様々な本を眺めていく。 ――澤山さんに似合う本? ――澤山さんが読みたいと思う本? ――澤山さんが出会ったこともなさそうな新しい本? 色んな考えが頭に浮かんでは消えていく。 ちょっと情報量が多くなってきてしまったように思えて、今日はこの辺にしようと書店を出て、朱華屋を目指す。 するとそばにある公園のベンチに、朝見かけた男性店員が座っているのが見えた。 休憩をしているのだろう彼の手には缶コーヒーが握られていたけれど、とてもリラックスしているようには見えなくて動きを全く止めているようだった。 その姿はどこか昨日話を聞いていた時の澤山さんと重なるようで、心に不思議なざわめきが漂うようだった。
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