王子くんの12か月 夏至、そして小暑

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「やったー!」 喜ぶ澤山さんの声で現実に戻る。 いつの間にか澤山さんに追い抜かれて負けていたらしい。 楽しい気持ちのまま明るいため息を吐き出すと澤山さんは伸びをする。 先程までとは違う穏やかな表情だった。 「王子くん、ありがとう」 「え」 未だぼーっとしていた俺は間抜けな声を出した。 「何だか少し靄みたいなものが晴れたというか、考えるべきことが整理されたような気がする・・・・・・」 「そうですか」 「うん、ありがと」 先程まで観ていた澤山さんの姿と書店で見かけた姿を頭の中で連ねていた。 何かサインのようなものがちらついたような気がした。 澤山さんと俺はゲームセンターを出て駅までの道を歩く。 歩道の脇にはアジサイが咲いており、店先などにも様々なアジサイの鉢植えがあったりした。 雨に濡れて潤っているアジサイはとても美しかった。 本当に色んなアジサイがあるものだ。 そんな俺の視線に気付いた澤山さんもアジサイを見ているようだった。
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