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「アジサイ」
「え?」
澤山さんは途端に足を止めたかと思うと口を開いた。
「アジサイにもね、色によって花言葉があるらしいの」
「へぇ、そうなんですか」
「私の名札にもねアジサイが描かれていて」
「はい」
「私の部下が描いてくれてて、絵が上手なの」
「なるほど」
「それを知ってた店長が、季節ごとに名札の絵を描いてくれって言ってね」
俺は澤山さんの言葉の意図するところが分からなくて澤山さんの顔を見つめた。
その横顔はどこか寂しそうで、澤山さんの後ろに見える青いアジサイが被って見えた。
その後、澤山さんは再び物思いにふけってしまい、駅で短い会話を交わして別れた。
俺は、次に澤山さんに会った時に本を渡そうと思っていた。
俺が思い浮かべている本を是が非でも見つけたいとそう思っていた。
しばらくの後、俺は結局書店ではなく朱華屋でその本を見つけることになった。
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