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「朱華屋さんの方ですよね?」
女性の伺うような視線と声にはっとして意識を戻した。
「あっ、はい・・・・・・最近来て下さってますよね?」
「はい・・・・・・すみません、いつも買わなくて」
小さな声で女性はそう言うと肩をすくめた。
「いや、そんなの全然。あの棚は結構頻繁に新しいものが入荷するのでまた気軽に見に来て下さい」
俺がそう言うと女性は安心したような微笑みを浮かべて『はい』と言った。
「そうだ、これをお願いしたいんですけれど」
俺はその女性の笑顔を見つめながら強く握りしめてしまっていた手の中の予約票のことを思い出した。
皺が寄ってしまった紙をさりげなく広げながら女性に差し出す。
「あ、すみません・・・・・・取り寄せして頂いていた本ですね、少しお待ちくださいね」
女性はようやく普段の様子を取り戻したようで、落ち着いてテキパキと対応をしてくれた。
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