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「あやめさん、ただいま戻りました」
俺は書店で受け取った本を大事に抱えて、朱華屋まで戻って来た。
「王子くん、おかえりなさい。ありがとう」
『暑かったでしょ?』と、注文を受けて作っている服作りの手を止めてあやめさんは労ってくれる。
梅雨に入っており、今は雨が降り出す前だからなのか蒸し暑さを感じていた。
「これでいいんですよね?」
書店で受け取って来た本をあやめさんに渡す。
それは色んな日本の風景を題材にした写真集のようだった。
「ええ、ありがとう、心がほぐれるようだから、嬉しいわ」
その答えを聞いて、あやめさん自身が欲しかったものでないのかもしれないと気付いたが、本を大切そうにしまって出かける準備を淡々と行う姿に何も言えなかった。
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