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彼女の名前は澤山智里(さわやまちさと)と言った。
俺はカウンター近くの椅子を彼女に勧めた。
「早速お願いしたいのは、私の勤め先にも関係することなんですけれど・・・・・・」
「・・・・・・は、はい」
今までとは違って自ら話を進めてくれようとする澤山さんに俺の方が少々面食らってしまっていた。
「あ・・・・・・・引き受けてもらえます?・・・・・・」
そんな俺の様子に気付いたのか、澤山さんは改めて確認をしてくれた。
「はい、もちろん、すみません、ちょっとびっくりしたというか・・・・・・」
「こちらこそすみません、いきなりで」
「いや、自分で置いておきながら・・・・・・すみません」
「いつもこうなんですよね・・・・・・」
向き合って話しながらお互いにちょっと慌てたような様子になっていたのだが、澤山さんが途端に溜め息をつくので不思議に思った。
「澤山さん?」
「あ、いえ、私っていつもこんな感じになってしまうというか・・・・・・自分の頭の中で組み立てるだけ組み立てて話し始めてしまうんです」
やや落ち込んだように見える澤山さんは今までの印象とは少し違って見えた。
「いや、分かりますよ、俺もそういうことあります」
「そう、です?」
「特に相手に何か伝えたいと思ったらそうなることありますよね」
「そうなの・・・・・・よね」
一瞬明るくなった表情は再び曇ってしまって、澤山さんは黙ってしまった。
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