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鏡を見ていると、ごく稀に海が見える事がある。
見える海はいつも同じだ。
海は夕日に照らされて、優しく波をうっている。
砂浜には私がいて大きな影と一緒にいる。
くっついて、ただ一緒にいる。
他の誰もいない。
影はしばらくたつと海に入ってく。
影はゆっくりゆっくりと
水平線に向かって歩いてく。
止まる事なく、ゆっくりと。
遠くにいくからか、沈んでいくからか
影はどんどん小さくなっていく。
私はただただそれを見る。
すっかり影が見えなくなると、
私も海に向かって歩きだす。
その次の瞬間には決まって鏡は茶色い椅子に座っている女の子を映し出す。
そして、決まって涙を流しているのだ。
この景色が此処に来る前の記憶なのかはわからない。
ただ、その優しく波をうつ海を私はいつでも見たいと思う。
そして鏡の前に座り続けているのだ。
ふと窓をみる。
窓の外には、ぽっかりと丸い月が浮かんでいた。
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