恋心

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私は、女と言う宿痾におかされている。例えばなしだが。 運が悪かった、厄日だった。彼女(仮)と出会ったのはそんな日だった。 72時間の耐久訓練を終え出くわした武装立てこもり強盗。自分達が普段想定している相手と比べものにならないチンピラに毛が生えた程度の連中に疲労からくる無茶な自己判断は犯行グループの単独制圧だった。 人質になっていた痩せかれた女は、おびえ流した涙で崩れた化粧でバケモノのような顔に失禁したらしくションベン臭かった。 チンピラに毛が生えた程度は無茶をすれば短時間に全員制圧できた。事が終わって駆けつけた機動隊には俺より先に休暇に入っていた相棒がいた。相棒はグズグズと俺の独断専行を責め立てた。今後の事を考えれば当然だと思った。 疲れた俺はその場を相棒にあずけ寮に帰って寝た。だから、人質になっていた女の格好をした生き物の思いを知ることはなかった。 あるマンションの玄関ドア前。 刑事課と法曹関係に進んだ友人がまわしてくれたいわく付きの事故物件。 自分は機動隊所属の単身者なので寮に入るのを義務づけられているが、秘密の隠れ家、セイフハウスとして件の物件を手に入れた。 ここは知る者も少ないそう言う物件だったはずだった。 玄関を開け古いタイプのマンションの通路を抜けリビングに、そこにはさも当たり前のような顔をした女の格好をした中学生男児がいた。 見た目だけならライトブラウンの緩やかにうねる髪をまとめ女の子らしいガーリーな服を身にまとってる。 ー武装立てこもり事件の時人質になっていた、彼女(仮)は小林奏と言い。それから一週間するかしないかでこの俺のガチストーカーになった。 行動範囲、交遊関係、過去の恋愛遍歴、好きな食べ物から苦手なものまで短期間によくまぁ調べあげたと驚いたものだった。まぁ彼女(仮)は恋は不可能を可能にするパワーがあるわ。と笑って言った。 ようするに見た目美少女、中身中学生男児。+αチートストーカースキル付随のこいつは俺に恋したらしい。好きだから相手の事を知りたくて、自分の年齢と性別を思って周囲を考えてセイフハウスに不法侵入すると言うありがたくない心づかいをみせた。 当初持っていた恐怖心や怒りと言った感情は徹底した彼女(仮)の行動によって麻痺して久しい。 それでも、セイフハウスのドアにサムターン回ししてついたであろう傷を見つけた時
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