恋心

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"警官の部屋に忍び込むなんて気狂いな"と思ったり。 素晴らしくタイミングよく同僚の柔剣道・逮捕術大会の祝勝会でしたたか酔ったその晩、繁華街で出逢った女と行きずりにしたキスを脅迫のネタにされた時は"どうして彼女が?""どうしてその場に?"考えれば考えるほど恐怖心を煽る出来事だったが最終的に『警官がそうとは知らず男子中学生に猥褻な行為をした』に周囲が落ち着くであろう現実に、弱みとして彼女(仮)に握らせている。 彼女は性同一性障害を患っている。MTFと言うらしい。もうジェンダークリニックに2年通っていると言う。だからややこしいが家族の理解があるため普段から女の格好をしているらしい。そして女として男の俺に恋情を抱いたらしい。 だが現状中学生男児が警官に『好きなの』と言ってる現実は性別の差よりも年齢、そして法の大きな壁がそそりたっているのだ。 相手はスキルLvMAXのチートストーカーだ。おまけに恋に恋して狂ってる。本人は幸せだろう。相手が強固に反発しないことで思いを受け入れてくれていると夢見ているだろう。現状は狂気を暴走させないように一歩引いて様子を見ているそんなとこだ。 久しぶりに訪れたセイフハウスには当然のように彼女がいた。 家主より先に座り心地のいいソファに陣取っている。 俺はキッチンでティーバックの紅茶を入れ始めた。 今日の奏はやけに無口だ。 ストレートと砂糖をひとつ溶かした紅茶をローテーブルに並べた。 ストレートの紅茶を少しずつ飲みながら奏の様子をうかがった。 「…私は、女なの。ワンピースが好きだし、ハイヒールも好き。宝石みたいな化粧品も好き。」 「私は、女子トイレを使えないの、男子トイレで小便器を使えない」 「女の子の会話に混ざっても女子とは認めてもらえないの、月経がないから」 「夢精すると絶望する、自分が男の体なんだって」 「いやらしい夢をみて精液を吐き出すより、月一回子供を作ることなく死んで流れていく血が羨ましい」 「白濁より痛みや不快感をともなう生臭い血を流す体になりたい」 紅茶を啜っていた瑛介は涙と鼻水を流している奏を見てあの日のようだと思った。疲労と眠気でイラついていたが助けるべき相手だと思った。 ボックスティッシュを投げてやる。優しくしてやる義理はない。 「…そんなことは家族かカウンセラーにでも話すんだな」 「私は貴方の事が好きだから知ってもらいたくて」
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