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奏は己れの恋慕に恋情で返してもらいたいのだ。しかし現状自分が奏に抱く感情は同情に近い。
ーいや、ストックホルム症候群を起こしかけているのか?奏は男子中学生だ、だがしていることは犯罪行為で俺は被害者だ。外見と実際の年齢そして行う犯罪行為の差が非現実的に思える。
「そう言えばホルモン治療がどうとか言ってなかったか?」
「うん、やっと15歳になるから診断結果とカウンセリングが終わったら始まるわ」
「…俺にはいまいち分からないが男の体に戻れなくなるんだろ?怖くはないのか?」
刺すような狂気色に染まった目でうったえる。
「変化は恐ろしくないわ、それより男の肉を被ったこの身体か嫌。女でない自分が嫌」
「…泣くなよ」
奏は柔らかく微笑んで攻撃を始めた。
「私が18歳になったら好きになってくれる?」
「私が20歳になって性別適合手術を受けたら愛してくれる?」
「生殖能力が無くても柔い女の体になったら貴方は私に触れてくれる?」
ー重く静かに真綿で首を絞めるように奏の言葉は俺を非難していた。
現実が見えてない訳じゃない、恋に舞い上がってる訳でもない。方法は褒められたものじゃないが奏は真摯に俺を愛してる。でも今の俺にそれに答えることは出来ない。
ー俺にはストーカーがいる、とびきり可愛い見た目のストーカーが。
そのストーカーは歪で美しい魂の持ち主だ。そして女と言う宿痾を患っている。
了
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