とる。

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本屋に勤めていると一番ムカつくのは万引きする人間だ。 題名も作者名も出版社すら分からない、うろ覚えの本を出してくれと無理強いする御客も腹が立つが万引き犯は客ですらないしな。 一冊の本を盗まれた場合、どれだけの本を売らなければ損失を補えないか考えもしないし、沢山在るものの一つだと思うから平気なのだろう。 中身を読んで確かめられる分、簡単にページに折り目を付けたり汚したりする輩も嫌いだが盗みを働く奴は本気で許せない。 だから気を付けろ。 気が付いた店員の俺も店主も注意をしてやらない。 文字に力が宿る事を忘れるな。 文章を綴る者達が一文字一文字を、一行の文章を血反吐を吐く様な想いで、それこそ自分の心身を削る苦労を重ねて出来上がったものがあると想像出来ないのか。 強い想いが本には宿っているのだ。 伝えたくてしょうがない想いが。 こうして本屋に勤めていると、色々と分かる様になるんだよ。 アンタがずるをする人間なのか、まっとうな人間なのかも。
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