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月のくぼみすらはっきりと見えるんじゃないか。 そう思ってしまうくらいな雲のない夜空を見上げながら、星川 巧(ほしかわ たくみ)は歩いていた。 彼は高校生になったばかりだったが、家を少し飛び出したいとか、友達に会いに行くとか、そんな目的があったわけではない。 部屋の窓を開けてみたら、気持ちいい風が吹いていた。 家族はみんな寝ている。少しだけなら何も言われないだろう。 そうやって連結していった結果、じゃあ散歩しよう。という解が出ただけの話であって。 その為、特に行き先などは考えないまま歩いており、ぼーっと歩き続けて、数年前に閉園した遊園地「ファンドリーランド」に入り口に着いていた。 その入り口にはアーチがかかっており、「ファンドリーランドへようこそ」の文字が描かれていたと思われる丸い形をした、板状のものが脇の草むらにちらほらと見えた。 何気なく奥の方を覗くと、入場門が見えた。 その入場門から園内になにか影が入っていくのも。 頭のなかでは、「帰らないといけない」と考えていたけれど、怖いもの見たさというか、軽い好奇心というか、そんなものが働いて、気づいたら入場門は彼の背後にあった。 門をくぐったところで、周りを見渡してみたら、先程見かけた影が『巨大迷路』に入っていくのが彼の視界に入った。 彼はすぐさま『巨大迷路』がある方に走った。
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