始めの一歩は大切ですよ。

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サウスエリアには門は無く、その代わりとでも言わんばかりに木々が生い茂っていた。 「すごいジャングル(・・・・・)って感じがするね……」 巧は圧倒されていた。 「まぁ、なんとなくそうじゃありませんか?北は氷、西は砂漠、南は熱帯、東は……何かあります?」 「なんか、先入観がすごいな……確かにそういうイメージあるけどさ。」 なおも2人はうっそうとした植物の間を進む。 歩きながら巧は考え事をしていた。 ──誰が世話してるんだ? そう。 木々は生い茂り、低木も青々としていた。 既に閉園したこの場所でなぜいまだに元気なのか。 巧はちらっとファンドを見た。 ファンドは視線に気付き、 「どうしました?」 と首をかしげた。 「ねぇ、ファンド。ここの植物って誰か世話してるの?」 「あぁ……」 巧の問いにため息のようなものをしてから、ファンドは語りだした。 「先ほど園長の念とかの話をしたでしょう?」 「あぁ。」 「それは各エリアのリーダー──『エリアマネージャー』にも言えることでしてね。彼らは他の従業員と比べてより深く関わっていたこともあり、手放す事になったときには悲しんでくれましたから……」 「……そっか。」 巧は、そのファンドの言葉に重みを感じてそれ以上の言葉が出てこなかった。いや、出さなかったというべきか。 少し開けたところに出た2人の間には、またしても沈黙が訪れてしまった。 それでも巧は、植物のツタの下にかろうじて見える舗装された道を進んで行く。 やがて、ドーム状の屋根を持った小屋──というには少し大きいが──にたどり着いた。 「なんだここ……」 巧はその小屋に圧倒されていた。 いや、『小屋に圧倒された』というのは少し違う。 正確には『植物に飲み込まれた小屋』 に圧倒されたわけだから、結局は『小屋』ではなく『植物』か。 「ここが、サウスエリア管理棟……です。外見は繁盛時とあまり変わらない様子で良かった。」 「え……これで繁盛時と変わらないのか……。」 ファンドが告げた衝撃の真実を聞いて、巧は思わず縮こまった。 さらにツタに埋もれた扉が音を立てて開いたものだから、巧はその扉を見つめて固まってしまった。 「……エリアマネージャーの念が出迎えてくれたみたいですね。行きましょう。」 ファンドはそう言うと、硬直している巧の肩に両手を置いて前に押し出した。
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