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「確率は限りなく低かったんだ。見つかるか分からないのに、期待させたくなかった。眩しすぎる希望が見えてしまったら、永遠に続くかもしれない今が辛くなる。タカをがっかりさせたくなかったんだ」
「……俺のために?」
静かにタカが問い返すと、視線が合った。照れたように笑みを浮かべたリックの目じりに小さな皺が浮かび、リックが費やした時を感じた。
「ダイヤモンドリングに見えるよう、角度や方位を計算して船のコースを決めたんだ」
タカを見つめるリックの瞳は、生き生きと燃えいる。
何度言っても愛を返す気のなかったタカのために、こんな求愛をしようと何年も星を探し続けていたらしい。十五で棺桶同然の船に乗り込んだ少年が見続けた夢が、これなのだ。その情熱にタカは呆れ、同時に賞賛の気持ちが沸いた。
「ほんと、お前……バカだよな。勝手だし、強引だし、俺に何の相談もないしな」
「ごめん、タカ」
申し訳なさそうにリックは肩を落とす。
「俺はそんなに頼りないか? 相談相手に値しないか?」
「まさか! 僕はただ君のために――」
「俺は守られたい訳じゃない。前もそう言っただろ」
リックの緑の瞳が大きく開かれ、涙が浮かぶ。プロポーズを断られると思ったらしい。悲しげに歪んだ顔を見たタカは、慌てて言葉を繋いだ。
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