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隣で椅子を軋ませ、リックが立ち上がった。
「タカ」
名前を呼ばれリックを見上げれば、青ざめた顔を緊張に強張らせている。視線をうろうろと彷徨わせ、盗み見るようにちらりと見ては、視線が合ったことにおびえるように、落ち着かない様子を繰り返す。
「これは僕からの結婚指輪だ。日食の指輪を受け取って欲しい。あの緑の星で一緒に暮らそう」
散々セックスをした間柄だというのに、この純粋さはなんだろう。大仰で馬鹿馬鹿しいと思うのに、嘲笑う気持ちは一切起こらなかった。
「……もしかしてプロポーズのつもりか?」
リックは頬を上気させ、頷く。こくりと喉を鳴らして唾を飲み込むと、タカの手を両手で包み込むようにそっと握った。
今回のコールドスリープから起きて以来、初めてリックはタカに触れた。それまで、リックはタカの寝室に足を踏み入れないどころか、ハグやキス、握手さえしていなかった。
「リック、お前が一人で起き続けていたのは、この星を探すためだったのか?」
鈍い金色の頭が縦に揺れる。
「なぜ俺に言ってくれなかった? 前もって相談してくれたら、俺も一緒に探したのに」
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