最初の覚醒

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最初の覚醒

 大気中の水分が凝固して雪になるように、意識がいつの間にか形成される。夢さえ見ない深い眠りの中から、冷たい靄の中へ引きずり出されるような感覚に、幾度となく繰り返された覚醒がまた訪れたのだとタカには分かった。  四年ぶりに暖められた空気が勢いよくエアコンから吐き出され、船内のライトが次々と点いてゆく様子を思い浮かべる。今ごろはメインコンピュータのAI(人工知能)が対話プログラムを起動させ、運行管理労働者が行うべきタスクをリストアップしているはずだ。  いつもの仕事を一週間ばかりすれば、また四年のコールドスリープに入る。飽きるほど繰り返された、退屈なルーチンワークに嫌気がさす。浮上し切った意識に観念しろと言い聞かせ、タカは浅い呼吸を意識して深く変えた。  低い機械音とともに空気が流れ込んでくるのを感じる。コールドスリープ用のカプセルが開いたらしい。 「……タカ」  聞き覚えのない低い声に、一瞬思考が止まる。目覚めたては五感が鈍く、起きても十分ほどはまともに動けない。タカは息を飲み、懸命にまぶたを持ち上げた。     
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