惑星

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 風が吹くと膝丈の細い葉が一斉にしなる。水草を思わせるような、細やかでなめらかな流線の先には小高い丘があった。  登る途中で疲労を感じ、タカは足を止めた。見下ろすと、空と融け合うように広がる湖がある。夕日に照らされた湖面は赤い光を反射し、タカは目を細めた。  今日も朝からたっぷりと仕事をした。船と違ってここではやることが山ほどある。春は木に登って鳥たちから卵を分けてもらうし、穀物類の種まきもしなければならない。夏は二人で湖畔に沿って旅をし、秋は冬に備えて収穫にいそしむ。温暖なここは冬も薄着でさほど困ることはない。  額に滲んだ汗を拭う。冷たすぎない風が全身を撫で、額に浮いた水分をさらってゆく。  丘の頂上で籠を片手に追ってきたリックを迎えると、何も言わずに手を繋ぎ、キスをした。  白かった作業着のツナギは茶色に変色し、襟は擦り切れ、膝には穴が開いている。植物の繊維で織った布を膝当てとして縫い付けたが、着心地良いとは言い難い。それでも自分たちの手で一から作った小さな布は二人の自慢の一枚だ。  服からはみ出た腕は、互いに黒く陽に焼けている。その腕を上に伸ばし、赤い実をもぎ取った。 「今年も豊作だね」     
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