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 ウルバーノに忠告を受けたあと、アリエッタは約束どおり荷解きを手伝うためにエミリオの部屋に向かった。  扉を軽くノックして部屋の前で返事を待っていると、ほんの少し間をおいて、慌ただしい靴音とともに勢い良く扉が開かれた。 「ごめん、待たせた?」  軽く息を弾ませて、エミリオが顔を覗かせる。  わざわざ出迎えたりしなくても、一言「入れ」と言ってもらえれば、いつものように自分で部屋に入るのに。  大袈裟すぎるエミリオの気遣いに胸の奥がくすぐったくなる。嬉しくて緩んでしまう口元を隠すようにうつむくと、アリエッタはウルバーノの忠告に従って、いつもどおりの仕事についた。  ベッド脇に置かれたトランクから衣類や小物を取り出して、てきぱきと所定の位置に片付けていく。  アリエッタが荷物を片付けているあいだ、エミリオは窓際のソファに腰掛けて、そわそわと落ち着かない様子で視線を泳がせていた。  あらかた荷解きを終えた頃、トランクの底に小さな小箱が入っていることにアリエッタは気がついた。  トランクの奥まで腕を突っ込んで小箱を手に取ると、それまで黙ってソファに座っていたエミリオが、唐突に立ち上がった。
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