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ガララッ
古びた扉を横にスライドさせると、建て付けが悪くなっているのか音が。中もどうやら、外と同じく木で作ってあるらしい。
だが、それよりもまず目を引いたのは……見渡す限りの本、本、本。壁に置かれた棚いっぱいに本が並んでいた。
「いらっしゃいませ。どのような本をお探しですか?」
低い、男の声。振り向くと、いつの間にかそこには男がいる。眼鏡をかけ、口ヒゲを蓄えた少々小太りの男。着ているエプロンに店名が書いてあることから、店の人なのだろう。
「あ、すみません勝手に……」
「いえ、お客様が何を謝ることがありますか」
つい謝ってしまったが、男の言う通りだ。聖域に足を踏み入れた気分だが、ここは店。俺は客。そしてこの男は……
「私、この店の店長を勤めております。どうぞよろしく」
店長と名乗る男は、人の良さそうな笑みを浮かべる。人と話すのが苦手な霧中は、なんとか話題を探す。
「えっと……随分と、趣のあるお店ですね」
失敗した。取り繕ったつもりだが、ボロいと言っているようなものだ。だが店長はそんなこと気にした様子もなく。
「ボロい店でしょう、ホホホ。取り繕わなくても結構です、それも売りの一つですから」
と、返してきた。
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