本の世界へようこそ

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「お客様は、本がお好きで?」 「えぇ、もちろん!」 店長の問いに、興奮気味に答える。 「家でも、仕事の休憩時間でも、電車の中でも、いつでも見るくらいに好きですよ!」 「ホォ、珍しいですな。最近の方は、電子書籍なるものを好まれるものと」 「確かに、今じゃ電子書籍が主流になってます。持ち運びにも便利ですし。けど俺は、あんなのを読書なんて言いたくない!こうして手に取って、ペラッと紙をめくるこの感覚……これこそ、読書の醍醐味だと思うんです!」 本は好きだ。読書は好きだ。電子書籍がダメというわけではない。だが認められない。読書とは、本の手触りを、本の香りを、この体で感じるものだ! 自然、霧中にも熱が入る。 「……素晴らしい!貴方のような方にこそ、本の文化を守ってもらいたい!本は貴方のために、貴方は本のために!」 「いやぁ」 よくわからないがおだてられ、しかし悪い気はしない。熱く語ったからであろうか。 「ここになら、俺の理想の本があるかもしれません」 「えぇ。小説からマンガ、ライトノベルに果てはアダルトなものまで、様々なジャンルを取り揃えております」 なるほど、本の宮殿とはよく言ったものだ。外からだとわからなかったが、内部は思った以上に広い。
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