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早速、本棚に並ぶ本を確認する。旧作から新作まで、様々なジャンルがずらりと並んでいる。こんなの、大手の本屋でもなかなかお目にかかれるものじゃない。
まさに、本の宮殿。しかも……
「すげ、どれも俺の好みばっか。けど全部読んだことあるんだよな」
驚くほどに、好みドストライクのものばかり。一度読んだものをもう一度というのも悪くはないが、これだけの本屋なら新しいものが見つかるかもしれない。
「ホォ、そのお歳でそこまでお読みになるとは素晴らしいですな」
店長に褒められ、満更でもない。職業柄であろうが、それでも、こうまで自分に共感してくれた人は今までいなかった。だから、勝手に親近感みたいなものが湧いてくる。
「ん、これ……」
ふと、目に入る分厚い本。手に取る。黒っぽい茶色の皮を使っており、材質もしっかりしてそうだ。重……くはない。大きさのわりには軽いようだ。
表紙に書かれているのは、何語だろう?
「『あなたの理想の本』。それを見つけるとはさすがですな、さすが、ご自身の理想の本を探しに来ただけある。それは、タイトル通り貴方の理想の本です」
「俺の理想?」
本のタイトルを教えられ、意味がわからないと同時に興味がさらに湧く。こくりと頷いた店長が、続ける。
「えぇ。その本は不思議なことに、読み手が一番欲している物語を文体として表するのです。世の中に面白い本は数あれど、その人の心を満たすことのできる真なる一冊を見つけるのは不可能に近い。しかしその本は、それを可能にした。まさに、読み手の理想の本」
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