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「これはこれは、佐藤さん、お待ちしておりましたよ」
腹のでた男が厭らしい笑みを浮かべながら近づいてきた。
「私も楽しみにしてきたのだよ。これが碧仁だ」
「ふふふ、さすがですね。映像でも惹きつけられましたが、実物のほうが断然素晴らしい。
用意は整っていますから、佐藤さんも準備を」
「そうしよう」
いったいここは何だ。異様な雰囲気に覆われた暗い部屋。壁面を取り囲むように部屋があるのか、ドアがある。1、2……全部で5つ。無意識に一歩さがったら腕を握られ、その強さに硬直した。
一歩下がったことで壁面の小部屋の奇怪さに気が付いてしまう。ドアのある壁面は白い壁なのに、両サイドは硝子張りだった――見えるのは白いベッド。
この先に待っているもが頭の中になだれ込んでくる。知らずに体がガタガタと震えた。和行さん、あなたははいったい……何者ですか?
20畳ほどのフロアの中心におかれたベッド。それを取り囲むようにして8人の男女が立っていた。
食い入るような視線がわたしに向けられる。……いったい、これから何が……。
「いくよ、碧仁」
有無を言わさない口調と同じくらい強く引っ張られ、引きずられるようにしてベッドまで連れて行かれる。仰向けに落とされて、背中からベッドに埋まった。素早く右手に手錠をかけられ、ベットヘッドの飾りに固定された。
「私も準備をしてくるから、少しだけ待っていてくれ」
わたしは見知らぬ人間達の視線から顔をそむけて、ガタガタと震えるだけだった。
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