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プロジェクターによって大きく拡大され披露された調教めいた映像。そえは、わたしの抵抗を封じるためのものだった。
「警察にいく?大学に訴える?まあ、それもいいだろう。私もタダではすまないが、このあられもない姿が、いったい何人の目に晒されるんだろうね?調査、捜査の一環で。君がエネマグラを咥えこんで喘ぐ姿は何人の男を興奮させるかな?それとも嫌悪されるかな?」
恋に浮かれた未熟なわたしは、何の疑いもなく合鍵を渡し簡単にカメラを仕込まれた。初めから目的は明確。ボサノバの音が流れ始めると、パブロフの犬のように期待に上気させた顔をして手をのばすわたしを見て、この男はほくそ笑んだはずだ……バカな子だと。
「貴方が来てから。活動が活発になりましたしね、お楽しみ会は最高です」
『sin』という名の、大人のお楽しみ会。最初は配偶者や恋人と参加していたらしい、日ごろのマンネリの解消を目的として。複数人数によるスワッピングのようなものだ。月に一回行われる「お楽しみ会」という名の「交換会」
それに変化をもたらしたのは、わたし……いや違う、佐藤だ。
同性の人間を「仕込み」段階から映像で紹介しながら、最初の交わりを全員に公開するという試みは大成功終わった。
『今日、君を抱くのは私だけだ』その言葉どおり、次からは違う人間に組み敷かれた。ガラス張りの部屋を覗くのは容易で、沢山のギャラリーにすべてを晒して、喘ぐ。
月に1度だった会は、やがて2回に、そして3回に増え始めた。そのうち、このビルに行けば、誰かがいるという状況になった。
戦利品のように人間を連れてきて、SEXする。それをセンターのベッドでみせつけたり、ガラス越しに覗かせるのだ。
男同士、女同士、複数……どんどん最初の決まりごとがなし崩しになっていく。金で買った人間を参加させる輩もでてきた。「会員」以外でも金を払えばお楽しみの分け前をもらえる。
設立メンバーの中心は、やはり佐藤。
この状況を疑問に思わないのだろうか?最少人数で守られた秘密は露見しにくい。しかしこの状況はあまりに危うい。
この場所が世間に晒される時がきたら、わたしはいったいどうなる?それはそう遠くない未来に思えた。
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