239人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴方は『peur』の門番になっていただきます」
「門番?」
「看板を掲げていませんから『peur』に用事がある人は、回りくどい道を辿って、私に行き付きます。そのルートはつねに変化させなくては安全とはいえない。権田のラインは、あきらかに裏口ですから、別の種類のものがあってもいいかと。他のルートは貴方の安全のために教えるわけにはいきませんがね。
貴方のは入口というより、ポストみたいなものでしょうか」
「ポスト」
「ポストは赤い。じゃあ目印になりえるものは?共通するワードです」
「フランス語……prue/jenet」
斉宮はニヤリとして嬉しそうに笑った。
「貴方に初めて逢った、あの夜を思い出しませんか?こんなふうに私を喜ばせる人間は、貴重です。
そういうことです、貴方なりの裁量で結構なので、何か言ってくる人間がいたら選別してください。価値ありと判断すれば、連絡を。天国の門に陣取るペトロみたいなものですね」
「使徒を引き合いに出さないでください。地獄におちます」
「ここでマスターでもママでもいいです、そういうものになって、少し「普通」のリハビリをすることも必要ですよ?恋をしたりね」
「わたしがこんなことに陥った原因が「恋」ですよ?」
「貴方を引き上げることができるのも「恋」かもしれませんよ?ただ……」
その先を待つ、質問は最後だから。
最初のコメントを投稿しよう!