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「蒼になることになった出来事、そして蒼がした仕事。あれを打ち明けないままに誰かの傍にいることは難しいでしょう。隠していることはやがて罪悪感になり実際してきたことと相まって、貴方は心を閉ざすでしょうから。過去もすべて受け止めて一緒に歩いてくれるような人……そういないでしょうね。 だから、出会う事があったら絶対に手放してはいけません。 私の名前や「prue」の具体名やターゲットへの言及さえなければ、おおまかに話していいですから」 「秘密が漏れませんか?」 「クズに話せば漏れますよ、間違いなく。でも貴方が話したくなるような相手は、他言しません。何故なら、それは貴方自身の過去を他人に晒すことになるから」  少し考えればわかる。この汚れた身体を欲しがる人間は欲にまみれた者だ。わたしの心を欲しがる人間なんかいるわけがない。もし、居たとしても……わたしのしてきたことを知れば嫌悪するだけだ。  受け止めてきた精子の数を懺悔にかえるとしても、一生分以上の時間が必要じゃないか?  わたしの心を欲しがる人間はいない。だから私も欲しがることは止めよう。そうすれば、手に入らなくても生きていかれる。  もっと現実的な話をするべきだ。 「最後にもう一つ。「大水 蒼」は葬られるのですか?」 「ええ……いえ正確には違います。沢木版の「蒼」は消えますが『peur』の「大水 蒼」は存在します。 貴方の前にも、次にも別の「蒼」が存在するのです。 代を重ねるごとに「大水 蒼」の情報が交錯して、本物がわからなくなる仕組みですよ。 そもそも「本物」がいない、どれも本物かつ偽物」  わたし以外の「蒼」……予想していなかった。  共通の「蒼」をいくら目指しても一致を見ない。何人存在して、これから何人に増えていくのか。  知らない方がいいことだってある。わたしの「蒼」が賞味期限切れになった意味がようやく呑み込めた。 「大水 蒼……「オオミズアオ」で調べてごらんなさい。正体がわかります」  そう言って、斉宮は店を出て行った。
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