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蒼をやめて1年半。今は単なるBARのママで、同じ嗜好を持った客を相手に日々時間をすごしている。
意味ありげな視線や言葉を受け取っても、その先に進む気は起こらなかった。誰もかれもがわたしと「寝る」ことに興味を持っているだけで、その先を望んでいないことがはっきりしていたからだ。
蒼の時は「仕事」だったからできたSEXも、こと自分事になると恐怖を感じる。
佐藤に簡単に堕ちた過去を振り返れば、わたしに普通の恋など出来るはずもない。後腐れのないSEXを意味もなくするくらいなら、マスターベーションで吐き出すほうがずっといい。自分で慰めている分には危険がないからだ。
恋……それはわたしにとっての鬼門。二度とあってはならない道で、そこを歩くつもりはない。
今日は何人の客がくるだろうか。オープンの20:00まであと30分。1:00まで「ガードの固いママ」として頑張らなくてはならない。
わたしが誰にもなびかないのは相手がいるからで、それは怖い男だと噂になっている。怖い男、それは裕のことで、たまにフラっと立ち寄り客を震え上がらせている。見ている分には愉快だけれど、わたし達が幼馴染以上の関係になることは絶対にない。それは昔からわかっていることで、これからも変わらないという事実は確かなものだ。
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