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「それには理由があります。あの男は私の顔を知らないからです。直接会ったことがない。
ですからここに客としてやってきても、私を認識できないのです。
それを言うならサイはバーテンダーをしている、これを知っている人間はいません。
バーテンダーの私、サイである私を知る人間はいますがね。
マルはバーテンダーをしていて権田に出入りしている。これを知っているのは桜沢しかいません。
マル=サイ=斉宮、この男はバーテンダーでありながら『prue』を運営している。これを知っているのは碧仁だけですよ」
「なんですって?」
「秘密は沢山ありますが、複数の人間と共有するつもりはありません。私一人が知っていればいいことです。私が握る様々なもの、それを手に入れるために多くの人間が動きますが、彼らは個別に役割をはたしているだけです。サイ、マル、そう名乗る男を仲介者として認識している、仕事のブローカー、質問をし見返りの金を置いていく男。私はピースでしか人と対峙しないのです」
「身分を明かしたのは、わたしが蒼だったからですか?」
「言ったはずですよ、碧仁。あなたしか知らないと。他の蒼たちは私の顔を知らない。管理者は別にいますから、私が出張る必要はない。私が指示を管理者に出す時は電話です。ですから管理者にも会う必要がない……つまり誰も私のことを知らないのです」
斉宮は姿をくらませていながら、多くの人間を動かしているということか。全てを握り、管理し使い時を見極める。顧客ですら斉宮の顔を知らずに。
では何故わたしはそれを許された?
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