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「言いたいことはわかりますよ。あのビルで開催されている宴の存在を知って調べた時、すぐあなたに行きついた。何故でしょうね、心惹かれたのです、あなたに。
もちろん性的な意味はないから安心してください。
私は人を信じることを忘れた人間です。でも何故かほっておけなかった。
そして考えたのです。私のことを知っている人間がいてもいいじゃないかと。それでも離れていかない人間が一人くらいいてもいいじゃないかとね」
「足かせをはめたのは貴方です。離れるも何も、離れることを許していないのは貴方だ」
「そうです。人付き合いにおいて私はポンコツですからね。どうやっていいのか解らないのです。こんな形になって申し訳ないですが、私に見つかってしまったと諦めてください」
斉宮はニヤリと笑みを浮かべて、申し訳ないなんて爪の先程も思っていないことを示してみせる。
この男がとんでもなく怖い人間であったとしても、佐藤とともにずっと地下にこもっているよりはマシだ。もう普通の生活を望めないのなら、いかがわしいくて刺激のある時間を過ごすほうが生きる気力が沸くかもしれない。
「離れられない現実を無視して逃げようとする程、わたしには自由を求める気力はありません」
「逃げたくなった時は言ってください。善処しますから」
嘘つき……そう言ってやろうと思ったがやめた。解りきったことを言葉にしても意味はない。
これから生きていく世界は、わたしに何を見せるのだろうか。
何かを見つけることは出来るのだろうか……。
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