ルイノアルの魔石

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 相棒は俺の後ろを走りながらわめいている。  塀の上だろうと、家と家の間の小さな隙間だろうと、所かまわず走り抜ける俺たちは、子どもであることを最大限に活かしているのだが。地の利は相手に有った。そして、人数の多さも。  つまりここを出ればどこに出る、ということを計算して、先回りされてしまうのだ。 「げ、ミラ。左右どっちからも来てる!」  そして後ろからも、だ。  家と家の隙間の向こうに、何人かいるのが見える。  後退も不可能。  目の前は、道を挟んでかなりの高さの壁。  俺は相棒を振り返り、飛ぶぞ、と合図する。  迷えば捕まるのだ。俺にとってこのくらいの壁は、飛び越えるのは何ともない。相棒はこのくらいの道幅が有れば、飛び上がる為の助走になるだろう。  俺は相棒の運動能力の高さは、唯一と言っても良いほどかっているものだ。  塀と言う細くて高い場所を、ほぼ全力疾走と同じ速さで走れるのだ。  そして、この町に入ってすぐくらいに見付かって逃げ初めてから、すでに三十分ほどは経過している。その間走り詰めだが、さすがに息は乱していても、走る速さはあまり変わらない。  俺たちが組んで旅を始めた当初は、平和だった。
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