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些細なことでも、スキンシップで表現してくる相棒のやり方に慣れている俺は、そんなことはどうでも良いから早く行くぞ、と走り出す。
見付かった瞬間に、森に戻るべきだと考えていたのは俺もなのだから。走る方向を考えるのは、当たり前だろう。奴らに先回りされたりしたおかげで、ずいぶんと遠回りさせられたが。
「待ちやがれ!!」
奴らの声が聞こえてきたのは、俺たちがすでに町から抜け出た後だった。
この町はすぐに森が有るから、逃げるには最適なのかもしれない。
これだけ逃げていた俺たちがここで待つわけが無いだろう。とっとと森の中へと姿を隠す事に成功した俺たちは、やっとそこで一息ついた。
「はぁぁ。ったく、どこ行きゃアイツ等いないんだ?」
もっともだと思う。
以前見つかった大きな街から、ここは遠く離れているのだ。発信機とか、魔術での追跡をしていない限り、こうも簡単に見付かる訳がない。
俺の瞳は、俺たちの二人のどちらからも、そんな物は発見できていない。このくらいは調べられる。
考えられるのは、奴らの仲間がいたるところに居るということだろう。
家族の元を離れ、ルイノアルの街を出たのは早計だったかもしれない。
外がこんな風だと知っていたら、もう少し自分に力が付いてから、と考えただろう。
「ミラ、とりあえず野宿出来る場所を探そう」
この相棒は、俺のせいで町でのんびりが出来なくなったというのに、俺を責める言葉を発しない。これまでも、ずっと。
俺にはいつもそれが不思議だった。
もう一緒にいられないと言われれば、俺は姿を消す気でいるのに。相棒はそれを恐れているかのように、寝る時も俺を抱き締めて寝る。今のように、逃げるのが終わった後も、俺は相棒の腕に抱きかかえられて移動する。
「ミラ、ごめんな。俺弱っちくって。駄目な相棒だよなぁ。けどさ、頼むから、俺の相棒でいてくれよ……」
俺の頭上で、相棒はそんなことを言う。
俺が相棒を巻き込んでしまったことに悔やんで、相棒でいられないと考えたように、相棒も自分の力が足りないことを、悔しがっていたんだとわかった。
「にゃー」
俺はお前の相棒で、お前は俺の相棒だ。と今は言葉を話せないから一声鳴いて、いつもの様に相棒の服の合わせに収まった。
ここが俺の定位置だ。
相棒が、いつもの様に頭を撫でてくれるのが嬉しい。
一緒に成長して行けば良い。俺はそう思った。
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