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「入りなよ」
少女が館の扉を指さした。
そうだ。ここで電話を借りて、タクシーを呼ぼう。
「すみません。お邪魔します」
脈うつような痛みをこらえて、館に入った。
入ってすぐ、後悔した。
ドライフラワーの香りは心地よいが、部屋は異常だ。
色とりどりの蝶の標本。五芒星や六芒星を象った真っ赤な絨毯。蝙蝠が跋扈する景色をモチーフにした油絵。
本棚には何故か『北斗の拳』が全巻揃っている。
白いレースがふんだんに使われたベッドに寝かされるが、全く休まらない。
絶対に怪しい宗教だ。
「五千円でいい」
いつの間にか少女がベッドわきに立ち、金を要求する。
「早く、楽になりたいんでしょ?」
詐欺に遭ったようで腹が立つが、この館から逃げるならば安い金額だ。
尻ポケットから財布を出し、5千円札を渡す。
「契約成立ね」
少女が不敵に笑った。
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