第一話 出会い

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『天草内科』 小学生の時から通っている、俺の行きつけの医者だ。 ここまで来て、ふと疑問が湧く。 今まで痛みで歩くのも苦痛だったのに、どうして息切れするまでに走ることができたのだろう? 時間帯が幸いしたのか、すぐに診察室に呼ばれた。 少女のことを除いて、これまでの経緯を説明する。 50歳を過ぎ、恰幅の良くなった天草先生が、診察台に立つ。 腹診をし、聴診器で腹部の音を探るが、分からないようだ。顔をしかめている。 「ここが段々痛くなった。間違い無いですね?」 天草先生が念を押すように、下わき腹を押す。場所は、少女が押した場所と寸分たがわなかった。 (マックバーネー点!) 俺も一応医学生だ。臍と右上前腸骨棘を結んだ線の、右上腸骨棘から1/3の点をマックバーネー圧痛点と呼び、急性虫垂炎の指標となる。
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